〜SAJ〜 Stepfamily Association of Japan

子連れ再婚家族のための支援団体

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岡田 光世氏

「アメリカの家族」著者
岡田 光世 さん



新しい絆を求めて------再婚家族
私は長年アメリカに住み、この数年間は「アメリカの家族」(岩波新書、2000年)の執筆のために、さまざまな形態の家族の人たちと会い、話す機会に恵まれました。この本では、生殖技術や養子縁組で子どもを授かった人たち、パートナーと一緒に子どもを育てている同性愛者たち、シングル、離婚家族、そして再婚家族が、いかに絆を育てていくかをルポしました。第五章は「新しい絆を求めて――再婚家族」です。

全米ステップファミリー協会(SAA)の推定によると、アメリカ人の半分以上が、人生のどこかで再婚家族に属しています。夫婦の半数が離婚し、離婚経験者の75%が再婚するわけですから、再婚家族はとても一般 的な家族形態になっています。

私は数多くの家族を取材しましたが、取材に応じてくれる家族を見つけるのが最も困難だったのは、同性愛者のカップルでもなければ、生殖技術で子どもを授かった人たちでもなく、再婚家族でした。それは拙著「アメリカの家族」でも触れたように、再婚家庭が他のどの形態の家族よりももろく、壊れやすいことの現れとも言えるでしょう。

離婚や死別により片親が欠けていたけれど、再婚することでまた元のように両親の揃った家族になれる、パートナーが得られて精神的にも経済的にも楽になる、とハッピーエンドを期待します。ところが、異なる価値観、歴史を持つ二つの家族が、一つ屋根の下で暮らしていくのは、そう容易いことではありません。

子どもがいる場合、とくにストレスは大きくなります。例えば、子どもが母親に引き取られ、その母親が再婚すれば、継父と一緒に住むことになります。子どもは母親を継父に取られたような気がしますし、継父は実の父親の座を奪う邪魔者以外の何者でもないのです。継父を受け入れることは、両親が再び一緒にならないと認めることになり、実の父親に対する背信行為のように感じてしまう場合も多いのです。

再婚の離婚率は60%、つまり5組に3組は破綻しています。これは再婚家族の難しさを物語っているといえます。でも、それだからこそ、家族に絆を深めようと人々は意識的に努力しています。そして、人として成長し、より成熟した関係を築くことができるとも言えるのでしょう。再婚は結婚後5年以上たつと初婚よりも安定するという研究結果 もあります。

再婚が日常茶飯事になっているにも関わらず、アメリカでさえ、こうした家族の実態はなかなか理解されてきませんでした。シンデレラなどの影響で、"継母は意地悪"というイメージも色濃く残っています。

それでも、再婚家族についての研究が進んでいるのは、やはりアメリカです。アメリカの夫婦、親子関係をすべてそのまま日本に当てはめることはできなくとも、子どもたちの複雑な思い、家族が直面 する問題など、共通点はかなりあります。再婚家族の場合、親子の関係の方が、パートナー同士の関係より歴史が長く、絆も強いわけです。お互いに精神的なより所を求めていたケースも多いため、子どもたちは継父(または継母)に警戒心、危機感を抱きがちです。子どもたちとの関係は、焦らず、ゆっくり時間をかけて築いていくことです。


「絆を深めていった家族」
葛藤を乗り越え、絆を深めていった家族について、拙著で具体的にルポしましたが、二コールのケースを少しだけ紹介したいと思います。二コールが10歳の時、母親は家を出ていき、彼女と弟は父親に引き取られまし た。母親は再婚し、5歳の男の子がいます。父親は10歳年下の27歳のスーザンと再婚しました。母親が出て行ってからというもの、二コールは「一家の女主人」として、父親と弟の身の回りの世話をしていました。そこへスーザンがやってきたのです。

スーザンがいくら愛情を注いでも、「あんたは私たちの母親じゃないのよ」といった言葉が子どもたちから返ってきました。スーザン自身、子どもの頃、両親が離婚し、母親は再婚。継父の家で一緒に住んだ経験があったので、二コールの気持ちは痛いほどわかっているつもりでした。

「子どもに傷つけられるたびに、相手は子どもなんだからと自分に言い聞かせてきた。子どもを疎ましく思うなんて恥ずかしいと思ったり、うまくやっていけない自分が情けなかったり。すべてわかっていて再婚家庭に足を踏み入れたはずなのに・・・」とスーザンは私に話しました。

二コールも、スーザンの気持ちはよくわかっていました。今、19歳になったニコールは私にこう言いました。「弟が「あんたは俺の母親じゃないんだよ」と言ったとき、スーザンは「わかっているわ。あなたのお母さんではないのよ」と言って泣いていたわ。弟がああ言ったとき、疎外感を感じ、この家で歓迎されていないと思ったでしょうね。スーザンを傷つけたくなかったから、母がいなくてさびしいとは言えなかった。気持ちを素直に表現できずに、逆にスーザンに辛くあたってしまったこともあった。スーザンが私達と父の間に入り込んでくるみたいで、嫌だったの」。

でも、祖母が亡くなったとき、泣きじゃくる二コールをずっと思い切り抱きしめてくれたのは、スーザンでした。腹痛がひどくて思わず泣いてしまったときも、二コールが眠りに落ちるまで手を握ってくれていたのは、スーザンでした。ボーイフレンドと喧嘩をしたときには、心配したスーザンが、母親と電話で話し込んでいました。二コールの高校の卒業式には、両親とスーザンが出席しました。母親がスーザンに歩み寄り、言いました。「いつもニコールのそばにいてくれて、ありがとう」。思わぬ 言葉に一瞬、戸惑いましたが、スーザンも答えました。「こちらこそ、ありがとう」。

二人の母親はどちらからともなく抱き合いました。二人とも泣いていました。傍らで母親たちを見守るニコールの目にも、涙が光っていました。


再婚家族は失ったところから始まる家族です
再婚家庭を成功させるためのキーワードは、「時」と「許し」と相手に対する「敬意」でしょう。時間をかけ、相手を許し、自分を許し、そして相手に敬意を払い、家族になっていくのです。それぞれが、家族の中で居場所を見つけていくのです。

ある意味で、再婚家族は失ったところから始まる家族です。アメリカでは、離婚、再婚後も、親子の関係は継続させた方が子どもの成長にとってプラスであるという認識に立っていますが、それでも以前とは違います。親はパートナーを失い、子どもは片親を失ったわけです。再婚家庭の人たちは失ったものがあるから、「痛み」を知っています。そして、複雑な人間関係で家族が成り立っているため、理解し合おうと意識的に努力しようとします。

過去の家族関係から逃れ、メンバーを替えて新たな家族を築けば、親密さを手に入れられるわけではありません。再婚家庭には独自の問題がありますが、結局は、どんな人間関係においても、まず自分をよく知り、相手をよく知る必要があります。

どんな形の家族でも、問題のない家族はありません。しかし、大切なことは、その問題が何かということより、それをどう捉え、どう乗り越えていくかでしょう。そして、幸せとは何を手に入れるかということより、何をどう捉え、どう生きていくかなのでしょう。

縁があったから、新たな家族になったのです。出会いは、決して偶然ではないと思います。選び取った家族にはそれなりのリスクも責任も伴いますが、その分、家族になっていく喜びも大きいはずです。

血のつながりを越えて家族になっていくためには、励まし合い、情報交換ができる場は不可欠です。SAJは日本の再婚家族にとって大きな支えとなるはずです。

※肩書きは2001年投稿当時のものです

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